ご挨拶

乗り物好きを自任していましたが、このところ徒歩での旅行がマイブームです。

2012年11月14日水曜日

阿房列車「統一号」(3)- 振子列車は峠のライダー

 20分遅れでドレスデン中央駅に到着。この駅に初めて来たのは確か1990年の夏。まだ辛うじて東ドイツも存続していた。当時は、ベルリンから国内急行でこの駅に着き、ブダペスト行きの国際急行列車に乗り換えたのだった。よく見たわけではないが、屋根を支える鉄骨は古びていて構内も暗かったように記憶しているが、今はすっかりきれいになっている。東西ドイツ統一後の復興事業もさることながら、大洪水で被災した後も改修されたはずだから真新しく見えるのは当然か。ライプツィヒ中央駅ほどのスケールはないが、頭端駅と通過駅を組み合わせた作りはユニーク。ファサードも州都の中央駅に恥じない構え。

ドレスデン中央駅のファサード

すっかり明るくなった中央の行き止まり部分


 この駅で次ぎに目指すホーフ行きのREに乗り継ぐ。REというのはRegional-Expressの略なので「ローカル急行」だが急行と言っても特別料金は不要。意訳すれば「快速列車」ということになる。通過する線路に挟まれた行き止まりの線路と櫛形ホームのある中央部12番線に目指す列車が入線してきた。車内販売は望めないので、コーヒーを買って乗り込む。この区間での楽しみは、ホーフを越えてニュルンベルクまで続く、Sachsen-Franken-Magistrale(ザクセン-フランケン幹線鉄道)とそこを走るザクセン-フランケン急行、つまりこのRE列車。

出発を待つRE 3782列車


 この区間、ドレスデンからホーフまでとホーフからニュルンベルクまでとは、前者がザクセンによって敷設された鉄道で、後者がバイエルンによって建設された鉄道であり、東西ドイツ分裂時代は、ホーフがバイエルン州の北端に位置しそれよりも北は東ドイツ、南は西ドイツだったのでもとから一本の路線であったわけではない。
 それを統一後、東西ドイツの連絡を密にするために、それまで日の目を見なかった二つの鉄路を幹線鉄道として整備することになり、大規模な改修が行われた。それまで最高70 km/hだった路線を最高160 km/hの高規格路線へと整備した。ただしその最高速度は通常の車両ではなく振子機構を採用した列車によってのみ達成される。未電化区間があったために気動車による振子ICE、ICE-TD(今はデンマークとドイツを結ぶ路線で活躍中。「海を渡る阿房列車(11)」を参照)が投入されたこともあったが、短い期間運用されただけで使用が中止された。その後、本来ローカル列車用に開発されたRE車両を利用したICが投入されたがそれも中止され、今は再びローカル線になってしまった。速達列車はREとして、またIRE(Inter-Regio-Express)として残っている。それがこれから乗る列車なのだが、どんな走りをするのかが楽しみ。

 ドレスデンを出発した列車は、直ぐに山岳路線に入り、やがて高原地帯へと進む。地形が単純で平坦なベルリン周辺と比べると、この辺りは変化に富んでいて面白い。10月には黄葉が楽しめるのではないかといった感じの風景が車窓を流れる。
 ここで昨日作ったお弁当を広げる。チーズとスモークトサーモンを挟んだだけのサンドイッチだが、風景がおかずになりなかなかいける。コーヒーは、ドレスデン駅の構内で求めたもの。


 私の陣取った席は、先頭車両のボックス席。二等なのだが、どうもこの部分は本来一等用のスペースのようだ。広さは二等と変わらないが、読書灯があったり、リクライニングはしないものの座布団を手前に引き出せるなど、二等とは少し差別化されているのがわかる。

 
 楽しみにしていた「走り」はどうかというと、これがかなり熱い! IREではなくREなので停車する駅はそれなりに多いのだが、カーブにさしかかってもスピードを落とさずに突っ込んでいくのは峠のライダーかスキーの大回転かといった感じで迫力満点。振子列車というとICE-Tがおなじみだが、カーブの多い在来線に投入されていると言っても、もともとが幹線なのだから、鉄道ファンでもない限り、よほど敏感でないと振子機能を使って走っていることには気がつかないだろう。
 それに対してこの路線の振子走行は、右に左にとカーブの連続で、右カーブにさしかかりボディーが右に傾いたかと思うと、連続してトトトと左に傾いて左カーブ。最高速度の160 km/hまで出ているのではないかという走り。すっかり夢中になってしまって、睡眠不足による眠気も吹き飛んでしまったほど。

ボディーを右に傾けて右カーブ
次は左カーブ

 その他、この区間には有名な煉瓦作りの橋梁(ゲルチュタールブリュッケ)があるのだが、速度を落とさずに走行するもので、あっという間の過ぎてしまってどこがそうだったのかよくわからないほど。改修以前は、橋の上はそろそろと用心深く走っていたようだ。





 ドレスデンを出発したのが定刻の7時54分。ホーフには10時30分に到着したが、私にとってはあっという間の2時間半だった。乗り物酔いではなく、すっかりそのスピードに酔ってしまった。
 これほどダイナミックな振子走行は、かつて経験したことがない。(つづく

4 件のコメント:

  1. こんにちは。
    612形の乗車記を書いていたら、全く同じような感想をBerlinerさんが書かれていて驚きました。全く同感です、あんなダイナミックな走りはまず味わえないですね。以前、フランクフルト中央駅から空港駅まで乗った時は何も感じませんでしたが、今回の乗車ではまさに魅了されました。

    Franken-Sachsen-Expressは一度乗ってみたいのですが、食堂車はおろか売店もない車内に4時間以上閉じ込められるという事実に恐れおののいて実現していません。バイロイト観光でも絡めたら良いのかもしれませんが。

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    1. 貴ブログの乗車記、拝見しました。私たちは偶然にも「ダイナミック」という表現を使いましたが、まさに!ですね。Akiraさんは、何と言うか楽しみです。

      Franken-Sachsen-Express、良かったですよ。ドレスデンからホーフまではRE、ホーフからバイロイトを経由してニュルンベルクまではIREでしたが、どちらかというと前者の方がカーブが多く、走りがダイナミックですね。ただ、やはり実質二両の編成は窮屈です。私は食糧と飲み物は持ち込む方なのでその点では良いのですが、ビールを持ち込んで長く置いておくわけにはいかないので持ち込めるものが限定されてしまいます。

      あとは貴ブログにコメントとして書き込みます。また後ほど!

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  2. はじめましてJYAMADAです。
    こんな列車があったとは知りませんでした。
    この路線はケムニッツまででも”ダイナミック”を楽しめますでしょうか?
    おっしゃる通りフランクフルト―ドレスデンのICE-Tではぼーっとしていると振り子を感じられません。
    DBのザクセンチケットを活用してドレスデンからライプチヒまでREで行くことを考えていたので、そこに組み込んでみても面白いかも、と思いまして。

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    1. JYAMADAさん、こちらへのコメント有り難うございます。
      私が乗ったときもケムニッツを通りましたよ。ケムニッツまででも振子走行していました。地図を見て線路が曲がりくねっているようなところがよりダイナミックです。
      行ってみてください。

      またお邪魔します。

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