ご挨拶

乗り物好きを自任していましたが、このところ徒歩での旅行がマイブームです。

2012年10月8日月曜日

CNLの夜行列車でベルリン-パリを往復(3)

 ハノーファーを出て少し走ると22時30分を回っている。車室ではベッドメーキングが始まった。と言っても列車給仕がやってくれるのではなくセルフサービス。これが簡易寝台車(Liegewagen)。寝台車(Schlafwagen)では、給仕がやってくれるのだろう。というよりも最初からベッドがセットされているのかもしれない。

 私のバースは上段なので、狭いスペースでのベッドメーキングは骨が折れる。まずはシーツを敷くが、これはシーツを二つ折りにして足の側を縫って閉じてあるという作り。頭の方は、枕が載るスペースの分だけ袋側が切り開かれており、その分だけ頭を出せる。言葉では上手く説明できないが。
 このシーツをベッドいっぱいに敷く。袋側は足下と壁側に向ける。その上に毛布を二つ折りにして掛け、顔が出るようにシーツの上端をこの毛布の上に折る。頭には枕を置いて出来上がり。難しくはないが、慣れないと薄暗く狭いバースではこれが一苦労。このベッドメーキングは少しユースホステルのような感じ。ドイツ人たちは慣れているのか難なくこなす。

 これが終わればもう寝るだけ。下のバースの小太りが、夜間も換気口を開けっ放しにするように主張している。前回スウェーデンに行ったときもそうだったが、新鮮な空気にこだわる人はヨーロッパには多い。ヨーロッパの中でも北ヨーロッパに多いかもしれない。ここは寒冷な気候のせいか家の作りが密閉度が高い。おまけに暖炉で火を使うことも多かっただろうから、そこからの排気で病気になると考えている人が多いのだろう。そう言えば『米欧回覧実記』にもそんなことが書かれていた。当時のベルリンの大学病院の最新病棟では新鮮な空気がいつでも入るようにしてあるとのこと。当時から二酸化炭素が健康に悪いと言うことになっている。
 しかし逆に南欧の方に行くと年寄りたちは風に当たるのが良くないと思っている節がある。もう20年前のことだが東欧を列車で旅したときに、夏で蒸し風呂のように車室が暑くなっても、同室のおばあさんは、窓を開けさせてくれなかった。
 それはさておき、換気口は廊下とは反対の窓の上についている。開けっ放しでは寒いかもしれないが、面倒なので小太り男の言う通りにしておいた。風を下側に行くようにしておく。夜更けて寒くなれば閉じてしまおう。上のバースの方が換気口へのアクセスがいい。

 車室の灯を落とすと真っ先に眠りに落ちたのは同じ上のバースに陣取った背の高い中年男。かなり激しい鼾を絶え間なくかいている。よっぽどうるさいと起こそうかと思ったが、そうしたところでその興奮で眠れなくなってしまうだろう。あきらめてどうにか収まるのを願って暗い天井を見つめる。鼾のご本人は、耳栓をしている。そうでもしないと自分の鼾で眠れないのかもしれない。もう笑うしかない。

 私はその鼾のせいで眠れない眠れないと思っていたのだが、どうもいつの間にか浅い眠りに落ちていたようだ。列車はハノーファーを過ぎるとゲッティンゲンで最後のお客を拾って朝まで走り続けるのだが、ゲッティンゲンに停車したのを記憶していないから、そのあたりでは眠っていたようだ。時刻表によればゲッティンゲン発車が23時32分。

 この後、再び鼾で寝付けなくなるのだが、ふと気がつくとどうも4人の部屋に5人目の乗客が乗り込んでいるような気配がする。どろぼうか?(つづく)

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