SFX(ザクセン・フランケン・エクスプレス)に乗ってたどり着いたのはホーフ(Hof)。この列車、日本のFSX(次期支援戦闘機計画)と混同しそうな名前だが、走りもそれと混同しそうだった。
それを「動」とすれば、下車したホーフの駅はまさに「静」。時間が止まったような佇まい。ホームから駅前広場に出て駅舎を撮影するも、駅前広場のスケールに比べて駅舎のそれが不釣合いに大きいため私のカメラでは全貌を納めることができない。
ここはかつてザクセン鉄道とバイエルン鉄道の結節点だった場所。日本は明治維新後に鉄道建設が始まったが、ドイツは1871年のドイツ帝国成立以前から各支邦の主導による鉄道建設が始まっており、ここがザクセンとバイエルンの鉄道における接点だった。現在のホーフとは不釣合いに立派な駅舎はその名残と言えるだろう。
ドイツの駅というのは、中近世の旧市街の外に作られることが多いため、駅前が閑散としているということは珍しくないのだが、ここでは駅舎が立派なだけに、なおさらその寂しさが印象的。土曜日の日中だから、ドイツ人は自動車でショッピングセンターに買い出しにでも行っているのか、駅から真っ直ぐに延びる通りにはほとんど人気がない。
こういう街は日本の地方都市にも増えているだろうが、モータリゼーションが行き着く未来を見たような気がする。
駅の周辺を歩いてもベーカリーが一つ営業しているだけで喫茶店一つ見つけられなかったので駅に戻った。駅自体がこの街の観光スポットになっており、正面入口の前には駅の縁起が掲示されている。
説明によると、鉄道交通の繁栄と衰退を見守ったこの駅は1989年の鉄のカーテンのほころび、ベルリンの壁の崩壊とともに再び歴史の証人になったとのこと。その年、プラハの西ドイツ大使館に逃げ込んだ東ドイツからの亡命者を乗せた列車がこの駅に到着した。タクシースタンドのところにそのモニュメントがある。
説明書きに添えられた写真(色付けモノクロ写真か?)は、鉄道交通華やかなりし1929年の一・二等待合室だそうだ。一・二等というのは現在のそれとは違って、今で言えばグランクラスと一等のこと。優等客のためのラウンジ。クロスのかかったテーブルがあるところを見ると飲食も供されたのかもしれない。日本にはこういう待合室はなくなってしまったが、ヨーロッパには今でも大きな駅には一等客用のラウンジが備えられている。
そしてかつてのラウンジだった場所は、今のホーフの駅舎にも残っている。
復元されたものかもしれないが、古典様式の柱頭を備えた円柱と天井の装飾や明かり取りの天窓などは往時を偲ばせる。今は、軽食コーナーとキオスクがある。
駅舎で鉄道の歴史散歩を楽しんだ後にホームに出てみるとALEXの列車が止まっていた。この私鉄は、バイエルン州でよく見かけるが、その編成はかつての特急の車両や食堂車などを座席車として連結していることがあり一見の価値がある。車両の更新前に一度乗ってみたい列車。
ここからはIRE(インターレギオエキスプレス)に乗り、ニュルンベルク中央駅を目指す。(つづく)
0 件のコメント:
コメントを投稿