先日、所用があってヴィースバーデンを日帰りで訪問したが、その際、初めて
ICEスプリンターを利用した。ヴィースバーデンは、日本人にはあまりなじみがないが、フランクフルト・アム・マインのあるヘッセン州の州都。そしてICEスプリンターも、よっぽど鉄の気がない限り、同様になじみがないだろうから、解説しておくと、ドイツの新幹線ICEの中でも限定された駅にしか停車せずに快速運転するICE。私の利用したベルリン-フランクフルト間では、朝夕一往復しか設定されていないから、最初期ののぞみ号のようなイメージでとらえるとわかりやすい。朝のICEスプリンターは、ベルリンを出るとどの駅にも停車せずにフランクフルトまで走り続けるビジネス列車。ベルリンでは、始発のズュードクロイツ、中央駅、シュパンダウに停車。
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ベルリン・ズュードクロイツで発車を待つICEスプリンター |
全席指定で、のぞみ号のようにICE料金+特別料金が必要になる。利用には予約が必要という前提になっているが、乗降口で切符をチェックするわけではないので座席指定無しで乗り込んで車内で精算することもできるようだ(正確な情報についてはドイツ鉄道にお問い合わせ下さい)。
10月23日の未明、パリに行ったCNLと同様に今回もベルリン・ズュードクロイツから列車に乗り込む。午前6時、定刻通りICEスプリンターは発車し、ベルリン中央駅とシュパンダウ駅で乗客を乗せて高速線に入ると一路フランクフルトを目指す。
私が今回利用したのは、普通車コンパートメントの通路側の席。ICE1及び2のコンパートメントは、車両の端に設置されており、一つのコンパートメントには6人分の座席があり、窓側には大きめのテーブルが備えられている。窓側の二列と通路側の一列の間には飲み物を置けるすき間がある。座席は開放室のものと同じで横三列の配置だから、横四列の開放室よりも空間を贅沢に使っているはずだが、料金は同じ。向かい合わせなので満席なら足を投げ出せない窮屈さがあるが、落ち着いたヨーロッパの雰囲気を楽しめる。もっともそれは同室の人に左右されるだろうが。
今回、フランクフルトへ向かう6人コンパートメントには、私とビジネス目的らしい女性が一人の合計二人の利用。かなり快適な旅になりそうだ。
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2等車コンパートメント |
ベルリン・シュパンダウとヴォルフスブルクの間は、高速線なので列車はほぼ200 km/h以上の速度で巡航。コンパートメントにいると速度を示す表示が見えないが最高速度の250 km/hが出ているのではないだろうか。ヴォルフスブルクを過ぎ、最短距離ならここからブラウンシュヴァイク方面へ向かうはずだが、列車はそのまま西に向かいハノーファーを過ぎてから進路を南へ向けるようだ。
ハノーファーには止まらないが、市内を通過し順調に走り続ける。まだ朝が早く外は真っ暗。ときどき街の灯が流れ夜行列車のよう。車内の乗客は、ビジネス客も多いが、大きなトランクを持ち込んだラフな服装の乗客もいるので、必ずしもビジネス客ばかりではない。一等車には朝食サービスあるようだが、二等車にはない。食堂車からコーヒーの出前がある。もちろん有料。以前、ICEに乗ったときにトレーにコーヒーを載せてコーヒー売りが来たので「後からカートサービスがありますか。ビールが飲みたいのですが」と訊いたら、持ってまいりましょうと言ってわざわざ食堂車から運んで来てくれた。申し訳ないことをしたが、そんなサービスもある。
ハノーファーは無停車だが、中央駅を通過したのかどうか、うとうとしていて確認できなかった。おそらく通らなかったのではないだろうか。
もう高速線ではなく、在来線を高規格化した路線を通っているため速度がぐっと落ちる。ICEは、ドイツの新幹線だが、走るのはすべてが高速線ではないし、その高速線もすべてがICE専用ではないというところが日本の新幹線と大きく違うところ。このスプリンターの場合も、最高速度は
260 280 km/h(HUHさんのコメントを参照)が出る車両だが、最高速度で走り続けるのはあまり長くはない。新幹線と言うよりは高速化した特急。
ICEとは
InterCity Expressだからまさにその通り。昔IC、つまりInterCityを特急と表現していたので、ICEはその上の超特急ということになったが、実は現在ではICEを特急、ICを急行とした方が、わかりやすいのではないかと思われる。但し、ここは意見が分かれるところだろう。
列車は速度を落としながらも順調に走っているかと思われたが、小さな駅へさしかかって急に動かなくなった。大分明るくなってきた車窓の外を見ると駅にはFliedenと書かれている。
しばらくして停車の理由がNotarzteinsatz、つまり急患であるというアナウンスがあったが、かなりの時間的ロスが出たようだ。その後列車は、スプリンターというほどの速度が出ずに、のろのろと走り続ける。既にフランクフルト到着時刻を過ぎたが、まだハーナウ辺り。ビジネス客の多くは携帯電話を取り出してさかんに遅延の連絡をとっている。
列車は、遅れを出してしまったことから、本来高速で走るべき割り当てられたダイヤのすき間を失ってしまったのだろう。ローカル列車に挟まれて身動きが取れないと言った走り方をする。走っては徐行し、止まってはまたのろのろと走り出す。
会議やアポイントメントのあったビジネス客は、心中穏やかではないだろう。フランクフルト空港からのフライトを予約していた旅行者も気が焦るだろう。しかしこればかりはどうしようもない。日本の新幹線のように専用線を走るなら大きな遅れを取り戻すことはできないにしても、問題が解決すれば高速での走行が再び可能になるのだろうが、在来線を走る特急は一度遅れを出すとますます遅れが拡大する。
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フランクフルト中央駅に到着。お疲れさまでした。 |
結局、フランクフルト中央駅に着いたのは、予定の9時42分を1時間以上過ぎた10時57分。ヴィースバーデンへ向かうのに乗り継ぐ予定の列車はとっくに出てしまったが、Sバーンは頻繁に出ているので、あまり問題はない。地下ホームからライン・マイン地方のSバーンに乗り、フランクフルト空港のローカル線駅を経て30分あまり、ヴィースバーデン中央駅に到着。この路線、貨物線になっているのか、頻繁に貨物列車とすれ違った。Sバーンの車両は、ベルリンでは見かけないタイプなので私には新鮮。
到着したヴィースバーデン中央駅は、小さいながらもすべての列車がここで折り返す、櫛形ホームを備えた頭端駅。ドイツ語では
Kopfbahnhofという。駅舎はなかなか立派で、ちょっとハンブルク港のターミナルを思わせる造り。
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ヴィースバーデン中央駅 |
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ヴィースバーデン中央駅のホーム。 |
ヴィースバーデンは州都と言ってもフランクフルトに比べると小さな街で、私の今回の訪問先である展示場/コングレスセンターのライン・マインホールは歩いて数分。
(つづく)