ご挨拶

乗り物好きを自任していましたが、このところ徒歩での旅行がマイブームです。

2012年10月10日水曜日

CNLの夜行列車でベルリン-パリを往復(5)

 メッス停車中、鼾男が列車の遅れを盛んに話題にしている。車掌に言って遅延証明をもらって来いと皆に勧める。それがあると一部払い戻しがあるのだとか。
 そう言えば、以前そんなことがあった。ICEでパリに行ったとき、車両故障で列車がマンハイムで立ち往生し、乗り継ぎができずにパリ到着が数時間遅れた。そのときパリ東駅のホームでフランス国鉄が遅延証明書、払い戻し申請書を配っていた。それに記入して送ったところ、後日フランス国鉄用のクーポンが送られてきたが、そうフランスに行く機会があるわけでもなく無駄にしてしまった。結局、手間がかかっただけだった。

 停車中、二両先の寝台車(Schlafwagen)へ行って、列車給仕からコーヒーを求め、車室で簡単な朝食を済ませた。コーヒー、2.90ユーロ也。車内販売は回って来ないのでどうしても自分で買いに行かなければならない。また簡易寝台には朝食はついていない。

 ようやく機関車の繋ぎ替えも終わったので、そろそろ発車だろうとだれかが言うと、5人目のメンバーとなったお嬢さんから、速い機関車に替えたの?という発言が出た。遅れているから、速い機関車に替えて遅れを取り戻すと考えたのだろう。「機関車トーマス」の世界ではそういうこともあるかもしれないが、現実にはそういうことはまずない。しかし娘チックな発想に私の心は和んだ。お嬢さんは、建築を学ぶ学生だということ。昨夜は大学都市のゲッティンゲンからの乗車だったのだろうか。

 ところでそのお嬢さん、座席車指定の切符でちゃっかり簡易寝台に潜り込んだのかと思ったが、彼女の言うことを信じるならどうもそうではないらしい。ちゃんとこの車室の指定がある切符を持っているとのこと。となるとDBの発券ミスか、あるいは彼女が車両を間違ったのだろう。しかしだれもここは4人用だから出て行けとは言わなかった。5人で座っても6人で座ってもそれほど窮屈ではないし、おじさんたちは女子には優しいのだ。

 メッスを発車して順調に走ればパリまで3時間ほど。列車は、朝もやがかかる谷間を抜け、小さな街を通り、運河に沿ってロレーヌ地方を走る。それほど風光明媚というわけではないが、朝の新鮮な風の中を走る列車の車窓には、やはり異境の新鮮な風景が流れる。



 列車がパリに近づくにつれて家が多くなり、都市部へと入って来る。住宅が密集しビルディングが見え始めると、モンマルトルの丘にそびえるサクレクール寺院が見えてきた。ほどなくして列車は、1時間あまりの送れとともにパリ東駅に到着した。

 おじさん二人の鼾にはまいったが、それでも一晩を同じキャビンで過ごした4+1人には、それなりの連帯感も生まれる。列車が停止すると、どこか名残惜しいく、アウフ・ヴィーダーゼーエン、チュスと言って、二度と成立しない共同体は解散となった。

 5人目の共同体メンバーとなったお嬢さんが、私に、毛布ありがとう、と言って車室から出ていた。(つづく)

パリ東駅に到着したCNL。ベルリン、ハンブルク、ミュンヘンから
発車した列車が併結され長大編成になっていた。

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