浅い眠りを繰り返し、夢の入口まで行っては引き返しということを続けていたが、気がつかない間に少し眠ったようだ。ごとごととかたい振動が続いていたのが急に静かになると外から光が差込む。列車は駅に到着したようだ。といってもこの列車は、ノンストップのはずだから信号停車か、と思っていたらカーテンのすき間にプラットホームが見え国境警備員らしき人影が窓のそばを歩いていくのが見えた。列車は、どうやら国境駅のついたようだ。バルト海に浮かぶドイツの島、リューゲン島。そのザスニッツ近郊のフェリー港Mukranのようだ。ここから対岸のTrelleborgまで鉄道連絡船がドイツとスウェーデンを結んでいる。
列車はゆっくりと動いては止まりまた動きということを何度か繰り返す。私は用も足したくなったし、列車がフェリーに乗り込むところを見られるかとバースから起き、コンパートメントを出た。一番上のバースから他の人の眠りを妨げずないようにそっと下へ降りるのはかなり骨が折れる。変なところに力が入って筋肉がつりそうだ。
時刻は午前2時前。コンパートメントから出て車両の前方に行くと、ちょうど列車をフェリーに載せるところだった。前に付いて列車を牽引していた機関車は既に切り離され、連結面の窓の外には何も見えない。後ろから入れ替え用の機関車がこの2両の編成を押しているのだろう。
青函連絡船のような列車用のデッキが口を開けている。一本の線路が船内で四本に分かれる。転轍機は船内ではなく陸側のランプの手前にあるが、普通の転轍機と違って、レールの載ったプレートをずらすことで列車の行き先を決める仕組みになっている。モノレールの転轍機のようだ。
列車は、ゆっくりと船内へ滑り込んでいく。
列車はデッキのまん中のレールに載せられたようだ。船内の駅、小さな狭いプラットホームが見えてくる。
行き止まりには車止めとオレンジ色の扉が見えてくる。
この扉は非常時の避難口になるようだ。救命ボートと非常出口のマークとついているが、列車がこの船内の駅に停まり車両が固定されても連結器側の扉はロックされたままだった。
船内駅のプラットホームに降り立つ。この船はM/S Trelleborgという船名。この列車デッキから出て上のデッキに行ける。直ぐに行きたいところだが、対岸までは4時間の航海ということだから今行くにはちょっと早過ぎる。それに上着をバースにおいてきたので少し寒い。
上着を取ってきて船内散策という手もあったが、何度も出入りするのは同室の人に気兼ねするし、散策してバースに戻り、対岸に到着するときにもまた出るというのではますます気兼ねする。今回はこのデッキだけを見学して後は船が到着するときにすることに決めた。
船内の駅は小さなプラットホームがあるだけ。あとは駅のトイレがある。トイレは列車内にも一両に二箇所、二両で四箇所あるが、とにかく狭い。便座に座ると私でも脚が壁にぶつかる北欧の大男では便座に座れないのではないかと思うほど。使うならこの駅のトイレの方が快適だ。
船には少しするとトラックが数両入ってきたが、鉄道車両はこの国際夜行急行列車EN 300の2両のみで、同行の貨物列車もない。
一通り見終わると車室に戻った。デッキにいる間、列車からはだれも降りて来なかった。興味もないのだろう。同室の人々もよく眠っているようで、後でフェリーのことを聞かれても白河夜船ということになるのだろうか。
私もあと数時間は眠らなくてはいけない。眠れればいいが、横になって時間が過ぎるのを待つのは辛いものがある。
こんにちは
返信削除以前(確か・・)シチリアに行くルートを思考中、同じ様に列車車両ごと船に乗り込むのがあり、是非!と思っておりましたが、所要時間の事もあり”やっぱり飛行機でしょ”と。
面白そうな写真がいっぱいで、とても羨ましく拝見しました。
チョロチョロ好きな私は、探検しまくりでしょう。
たぬきさん、コメント有り難うございます。シチリアのも車両航送ですか。後で時刻表でどんな列車が走っているのか見てみます。
削除こちらの航路は、旅客列車の航送はこのEN300列車一本になってしまいました。鉄道連絡船といっても両端のフェリー駅には旅客列車は行っていませんので、乗るには、EN300を使う以外は自動車でアクセスしないといけません。
ヨーロッパの鉄道連絡船は、トンネルや橋がかかって数を減らしていますが、この航路とデンマークにまだいくつか残っています。
船内の様子も撮影してきましたのでお楽しみに。私にとってほんとうに楽しい旅でした。