パリ東駅に到着し、ホームの端まで来ると女房が待っていてくれた。1時間遅れで大分待たせてしまって気の毒だった。車内からSMSを送ったはずだったのだが、私の操作ミスで送られていなかったようだ。女房の携帯電話はフランスのもの。私のはドイツのもので、パリとベルリンにいるときは、国際電話になるのだが、遅延の連絡を入れようと思ったのはフランス国内。電話番号の国番号をとってから送信しないといけなかったのだ。
パリではサン・ミッシェル近くの個人アパートを宿として借りており、到着してシャワーを浴びると女房が軽い食事を出してくれた。パリのクロワッサン。なにかパリというだけで美味い。焼き立てはもっと美味いのだとか。
人心地つくと昨夜の寝不足のせいか目眩、いや陸酔いがする。じっとしていても揺れているような感じ。体を伸ばして横になれるだけで十分贅沢な旅だと思ったのだが、あの鼾は想定外だった。そして6人部屋と同じスペースしかない4人部屋の上段バース。これも想定外。
スウェーデンへ行ったときに使った6人部屋に懲りたので4人部屋にしたのに、これではただ4人部屋の追加料金を無駄に払っただけではないか。そう思うと収まらない。そこで、4人部屋の上段の利点は一体なんなのか、6人部屋とどう違うのかとCNLに説明を求めるメールを出してみた。
機械的に「ご意見有り難うございました。今後のサービス改善に役立てます。」なんて自動返信が返って来るのかと思ったが、週末が明けるとちゃんとした返答があった。これは評価できる。その内容を紹介すると、6人車室では他の5人のお客様と一緒に旅をするのに対し、4人車室は、他の3人のお客様と一緒に旅をするのがメリットで、5人目と6人目のお客様のためのベッドは高い位置で固定されています、というもの。5人目と6人目のお客様のためのベッドとは、中段ということになる。う〜ん、確かに嘘ではないし、ちゃんとメリットを指摘しているが、上段のバースにあたってしまったときの窮屈さが6人部屋と同じことについては何らの説明もない。都合の悪いことは、敢えて回答しない、弁解しないというのは、裁判でのテクニックのようで、流石は法律の国独逸と思ったのだが、裁判官の心証はひどく悪い。
しかしへ理屈に聞こえなくもないとは言え、理屈で説明されてしまったからには仕方がない。私は、CNLの回答に対して、回答有り難うございます。次回も是非CNLチームと一緒に旅を楽しみたいと存じます。ひいては4人部屋の上段バースのスペースの改善を提案します、と回答しておいた。
現在の4人部屋が、かつてのように上段と下段でほぼ同等のスペースを確保できなくなっているのは、設備の老朽化によるところが大きいと私は考えている。上段ベッドを壁に立て掛ける留め具が金属疲労で折れてしまうことが多く、運営会社は、それを改修するのは、インテリア全体の耐用年数を勘案すると割に合わないと判断したというのが私の推理である。近い将来、CNLの簡易寝台車の内装が全面改修され、かつての快適さを取り戻す日が来ることを夜行列車好きの旅客として切に望む。
しかし、4人部屋のメリットは何かとについて私の考えをまとめておきたい。それは、乗り込んで就寝するまで、下段のベッドを座席にして座っていられることだろう。日の長い季節なら景色を眺めたり、今回のように食事もゆっくりできる。6人部屋で中段のベッドが低い位置に固定されていれば、頭が支えてしまうので下段のベッドを座席として使うことができない。本当は中段ベッドは座席にするときには背板になるのだが、入線時に既に寝台がセットされているとそうするには他の乗客の了解がいるし、セットし直すのはこつがあって素人にはなかなかできないということもある。そう考えると、4人部屋のメリットは確かにある。
しかし逆に言うと直ぐに就寝したくとも他の乗客が食事をしていたりすると、下段をとった者は横になれないという難点もある。となると出発時間が遅く、乗ったら寝るだけという場合には6人部屋を選んだ方が良いということにもなろう。(つづく)
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