美貌の観光ガイド、カールのことをご存知の方、いますか。彼は日独のハーフで、1990年代のベルリンの壁崩壊直後に活躍していました。主に個人の旅行のアテンドをしていたようで、ときには約束をすっぽかしたり、レンタカーを借りると言っては自分の乗りたい車、案内期間外まで借りてちゃっかり私用するといった抜け目ないところがありました。
それでもお客の要望によく応え、お望みとあれば観光客が行かないような裏町にまで案内してくれていたようです。
当時は、学生の身分でベルリン工科大学に籍を置いていたようですが、後に芸術大学に移った可能性もあり、自称芸術家でもあったそうです。
と言っても、彼は実在の人物ではなく、桐野夏生の小説の登場人物。私の読んだ限りでは『顔に降りかかる雨』と短編集『ジオラマ』に登場しています。
1990年代前半と言えば、壁が崩壊し、東西ドイツ統合後の混乱期。通常の観光とは違った目的の「観光」や取材で訪れる個人旅行の日本人も多く、そういった特殊ニーズの個人に対して、根無し草的な人間にしか知らないようなベルリンを案内し、体系化されていない報酬を稼いでいたカールのような「観光ガイド」もいたことでしょう。桐野氏もベルリンを取材に来て、そんな観光ガイドに会ったのでしょうか。
どなたか、そんなカールをご存知ではないですか。
『顔に降りかかる雨』によれば、Bregenzer Straßeに住んでいたということです。この通りは、ベルリンのWilmersdorf区に実在します。
この通りからは、西ベルリン一番の繁華街だったクーダム通りも近く、カールのような学生が住むにはちょっと家賃が高かったのではないかと感じさせる場所。彼のバイトは、それほどぼろい儲けだったのか。あるいはだれかとシェアして住んでいたのかも。
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