ご挨拶

乗り物好きを自任していましたが、このところ徒歩での旅行がマイブームです。

2012年6月18日月曜日

海を渡る阿房列車(5) - たった2両の夜行急行列車出発

トーマスクック時刻表が届いたその日は、阿房列車旅行決行の当日。荷造りした鞄にこの一冊をしのばせて21時過ぎに部屋を出た。中央駅までは30分足らずなので22時半の出発には早過ぎるのだが気が急いて家にいるよりは外に出た方がずっと気持ちが楽。

夏至も近いこの時期、21時半を過ぎた中央駅のそらはこの明るさ。列車が出発する1時間後は、もうとっぷりと暮れているだろうが、北ヨーロッパの夏はなかなか暮れようとしない。


目的の列車を時刻表で確認すると、22時31分発、スカンジナビア・ナイト・エキスプレスとなっている。トーマスクックには、ベルリン・ナイト・エキスプレスとなっていたが、たしかに目的地を考えればこう呼ぶのが合理的だ。出発は4番線。地下のホームとなる。

地下の4番ホームにある編成表で自分の乗る車両を確かめるべく列車を探すが、載っていない。出発列車表には、たしかに4番線と書かれていたのでこのホームで間違いないはずだが、やはりない。裏にあるのかと思って確かめてみたがやはりない。この列車は、VEOLIA Transportという会社が運行する私鉄。ドイツ鉄道との共同ではないため、ドイツ鉄道が運営する施設では情報が十分でないのかもしれない。

そのホームへ入ってきた列車は、たった2両編成のこれ。国際夜行急行列車がたったの2両とは寂しい限りだが、これが現実。もはや風前の灯火ということか。車両は、普通の2等コンパートメント座席車の通路側の窓を遮へいしている程度、多少屋根がたかいかと思ったが、昼の車両とほとんど変わりがない。これが簡易寝台というもので、重厚な本格寝台とは差別化されている。

車内の通路側。どのコンパートメントも既にカーテンがひかれている。

出発時間が遅いので入線時にはもう寝台がセットされているが、ベッドメーキングは自分でやる。シーツ、タオル、ブランケット、枕カバーが配られていた。6人コンパートメントの簡易寝台はかなり狭い。どのベッドでも横になるだけで、背中を伸ばしては座れない。とにかく寝るだけのスペースしか与えられていない。

2両の車両のうち前の一両には修学旅行帰りと思われる若者のご一行が陣取っている。私の乗る車両は個人のお客ばかり。同室のベッドの向かい側は、ライプツィヒ大学で学ぶスウェーデン人の大学生。二週間の帰省で中部スウェーデンまで行くとか。開催中のサッカーヨーロッパ選手権でスウェーデン代表はイングランドに敗れて早くも敗退決定だとかといった話をした。

2両編成の急行列車は定刻にベルリン中央駅を出発。バースに座っていることもできないし、食堂車やビュッフェといった設備があるわけでもないので横になれば寝る他にできることはない。30分ほどすると改札が回ってきたので鞄にしまった切符(自分でプリントアウトしたもの)を見せるが、身分証の提示は求められなかった。

横にはなるがなかなか寝付けない。寝台はかたく狭い。換気口はモーターの音がうるさく走行中は風が冷たい。浅い眠りを繰り返す。同室の人たちはどうだったのだろうか。

これは寝台車ではない。ドイツ語だと簡易寝台車はLiegewagenというが、これは眠る(Schlafen)のための車両ではない。中国の寝台車は(軟/硬)臥車というが、その臥車がLiegewagenの適訳ではないかと思う。「眠り」は保証されていないのだ。

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